今回は「交通事故」の第1回ということで少し長めに書いてみようと思います。相模原の弁護士は交通事故の案件を数多く経験していると思いますが、もちろん私も例外ではありません。これから過去の担当事件を通じて得た知識・経験を少しずつまとめて記していきたいと思います。不幸にも交通事故に遭われてしまった方にとって、何か一つでも役に立つ内容にしていければと考えています。

現代の車社会においては「交通事故」という言葉が無くなることはありません。たしかに警察庁交通局の統計によれば、交通事故発生数は平成16年頃のピーク時を境に減少を続けていますが、それでも平成27年では年間53万件以上も発生しているのが現状です。「まさか自分が起こすはずない」といつも通りに生活をしていても、ある日突然交通事故の加害者になってしまうこともあるのです。そこで、今回は、事前に知っておくべき交通事故を起こしてしまった時にまず最初にしなければならない4つのことをお伝えします(ただし、事故全体を通して「しなければならないこと」はこの4つに限りません。今回は、最初にすべき4つのことをお伝えしていきます)。ぜひ参考にして下さい。

1.道路交通法

 まず、私たちが普段道路を運転する際の基本的なルールは「道路交通法」という法律で定められています。この法律の目的は、1条で「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」とされ、具体的な内容として、例えば無免許運転等の禁止や酒気帯び運転等の禁止などを始めとしたルールが詳しく定められています。この辺りは運転免許を取得する際の学科試験などでも問われる部分かもしれません。
 さて、それでは交通事故を起こしてしまった時にしなければならないことはこの道路交通法のどこに記載があるでしょうか。この法律の目次を上から見て行きますと、「第四章 運転者及び使用者の義務」「第二節 交通事故の場合の措置等(第72条―第73条)」という記載が見つかります。

2.道路交通法第72条

 主に交通事故が発生した時にどうすべきかを記載した規定として、一番大切なのは道路交通法第72条第1項です。少し長いのですが、重要なところですので引用します。
 「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」
 いかがでしょうか。少し長くて大変だと思うのですが、この中に交通事故を起こしてしまった時にしなければならない4つのことが規定されています。これらを「措置義務」と呼ぶこともありますが、対象が事故の加害者に限定されていないという点には注意が必要です。
以下、4つの点について分けて説明します。

3-1 ①自動車の運転を停止し事故の状況を確認すること

 まず、交通事故を起こしてしまった場合、当然かもしれませんが、すぐに自動車を停止させて、負傷者の有無や、自動車の破損状況、事故現場の危険性などについて確認をする必要があります。これをせずに走行を続け、現場から逃走したりすると、「当て逃げ」「ひき逃げ」等にあたる可能性が高くなります。

3-2 ②負傷者の救護

 次に、負傷者がいる場合には救護をする必要があります。とはいえ、負傷者の怪我の程度や部位によってはむやみに動かさないようにすることも大事ですから、事故現場においては止血などの可能な応急措置にとどめ、すぐに救急車を呼ぶなどの行動が必要になります。

3-3 ③道路上の危険防止措置

 また、例えば事故現場に車両を停車させたままでは後続車両の妨げになり、二重事故を引き起こすことにもなりかねません。そのため、速やかに路肩などの交通の妨げにならないような他の場所に移動させたり、後続車に事故の発生を知らせたりするなどの行動が必要になります。

3-4 ④警察官への事故報告

 さらに、現場の警察官や最寄りの警察署に、交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置などを事故報告として行う必要があります。この報告の要否は事故の大小によって区別はされていませんので、事故の規模に関わらず報告が必要な点には注意が必要です。

3-5 ①~④に違反してしまうと…

 これらの4つの措置義務に違反してしまうと道路交通法により罰則が科されてしまいます。それぞれの違反のケースにおいて、懲役または罰金刑を定める規定がありますので注意が必要です(第117条、第117条の5第1号、第119条1項第10号など)。例えば、人身事故や物損事故を問わず、④警察官への事故報告を怠ってしまうと、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されると規定されています(119条第1項第10号)。

4.番外編:事故現場でするべきではないこと

 交通事故を起こしてしまった場合には、頭が真っ白になり、適切な判断ができないことの方がむしろ普通ですので、通常は事故現場での即決の示談や、金銭のやり取り、過失割合の決定などはしない方が良いでしょう。ここで状況確認をよくしないままに事故の処理を決めてしまうと後々のトラブルになることがあります。実際に、不明確な費目での金銭のやり取りをしてトラブルになったという事例もありますので、注意が必要です。

5.まとめ

 今回お話ししたことは今現に交通事故の当事者となっていない方からすると当然のことかもしれません。もしもの時のために今から再確認をしておいていただきたいという思いからお伝え致しました。少しでも頭の片隅に置いておくといざという時の行動を左右するでしょう。