今回は「交通事故」の第4回目です。私の事務所は相模原市内(最寄駅:小田急線・相模大野駅)にありますが、やはり交通事故の御相談は多いです。事故に遭われてしまった方にとって、何か一つでも役に立つような内容を記していきたいと思います。今回は、前回に引き続き後編をお伝えします。
 

4.示談の意味を知っておくこと

 示談の意味合いについても知っておかなければなりません。交通事故における示談とは、加害者が約束した一定額の損害賠償金の支払いを被害者が受領し、被害者が加害者に対してそれ以上の損害賠償請求をしないということを合意することを意味します。すなわち、一度示談に合意をし、示談書に署名押印をした場合には、その後に被害者からその合意を一方的に破棄したり、さらなる追加請求を行うことなどは原則として出来なくなるという点に注意が必要です。
 ただし、示談時に予想できなかったような後遺症などの損害が発生した場合は、その分の請求については理論上可能と思われますが、交通事故との因果関係の部分や、示談時に予見できなかった点などの立証が必要になってきますので、現実の請求は相当困難であると考えておいた方が良いでしょう。
 

5.支払い確保に向けて示談内容を工夫しておくこと

 ようやく示談交渉がまとまり、損害賠償金額が決まったときにはそれを明確に示談書に記載すべきことは必須です。そして、通常は、支払時期や支払回数についても示談書に記載すべきことになりますが、これを被害者側から考えると「出来るだけ早く、一括払い」という条件に近付けて考えていくべきでしょう。
 この点、加害者が任意保険に加入している場合には、基本的には「出来るだけ早く、一括払い」という条件が満たされることが多いです。しかし、未加入の場合には示談書の取り交わし自体が困難となるケースも多いです。仮に、示談の合意と示談書の取り交わしに成功したとしても、損害賠償金が分割払いにならざるを得ない事態も想定すべきでしょう。その際であっても、①頭金を増やし分割回数を減らすよう努める、②連帯保証人を確保する、③示談書自体を強制執行認諾文言付き公正証書として作成し、不払いの際には直ちに強制執行が可能なように準備をしておく、などの何らかの手立てを講じておく方が良いでしょう。
 

6.まとめ

 今回は2回に渡り示談交渉を行う際の留意点についてお伝えしました。一般的には、症状固定となり、後遺障害等級手続きが終了した段階で、加害者加入任意保険会社の担当者からの示談案が自宅に届くこともあるかと思います。その際であっても一歩立ち止まって、冷静に金額を確認し、示談交渉を開始していくべきでしょう。まず算定の基準を把握し、各専門家に相談をするなどして損害賠償額算定基準(赤い本基準)によるとどうなるのかについて確認するよう努めて下さい。時効が間近に迫っているなどの事情が無ければ、緊急に示談をする必要は基本的にはありませんので、自身の状況や気持ち、提示された金額などをよく検討の上、少しでも納得に近付ける形で最終決定をすべきでしょう。